東京地方裁判所 平成7年(ワ)14410号 判決 1998年1月30日
東京都港区三田三丁目一一番三六号
原告
エス・オー・シー株式会社
右代表者代表取締役
蟻川浩雄
右訴訟代理人弁護士
平川純子
同尾﨑英男
同
城山康文
右輔佐人弁理士
増井忠弐
東京都世田谷区池尻三丁目一番三号
被告
武藤工業株式会社
右代表者代表取締役
武藤洋
右訴訟代理人弁護士
安原正之
同
佐藤治隆
同
小林郁夫
右輔佐人弁理士
西島綾雄
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は原告に対し、金三億一一三三万七九九〇円及びこれに対する平成七年八月八日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告の特許権
訴外株式会社デルフアイ(以下「訴外デルフアイ」という。)は、もと次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許請求の範囲第一項の発明を「本件特許発明」という。)の特許権者であったところ、原告は、昭和六二年一月一三日、本件特許権を訴外デルフアイから譲り受け、同年三月二三日、その旨の登録を経由し、本件特許権を有している。
登録番号 特許第一一一八四六〇号
出願年月日 昭和五四年八月二三日(特願昭五四-一〇七三六八号)
出願公告年月日 昭和五六年一二月二四日(特公昭五六-五四二三八号)
登録年月日 昭和五七年一〇月一五日
発明の名称 自動製図機用画線ヘッド
特許請求の範囲第一項 本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という。)該当欄記載のとおり
2(一) 本件特許発明の構成要件は、次のとおり分説される。
A<1> 駆動源によって駆動される芯加圧棒を備え、
<2> 複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る
自動製図機用画線ヘッドにおいて、
B 前記芯ホルダの図板面垂直方向のストロークを少なくとも大小二段に切換えることを特徴とする自動製図機用画線ヘッド
(二) 本件特許発明の作用効果は、次のとおりである。
芯ホルダの垂直方向のストロークを少なくとも大小二段に切り換えることにより、画線作業中画線ヘッドが次の画線開始位置に移動する時にも、芯ホルダを交換する際に必要なストロークと同一の大きなストロークを与える必要がなくなり、画線能率が大きく向上した。また、画線作業時の芯ホルダのストロークを小さくすることにより芯加圧棒の下降に要する時間をも短縮することが可能となり、エンピツ芯用画線ヘッドによる高速の画線が可能となった。すなわち、従来のエンピツ芯用画線ヘッドのように芯ホルダを単一ストロークで制御するのではなく、多段ストロークで制御することにより、従来技術に比べ格段の高速画線動作を達成したのである。
3 被告は、別紙目録記載の高性能プロフェッショナルプロッタFシリーズ(以下「被告装置」という。)を製造販売していた。
被告装置の構成は、別紙目録記載のとおりであり、被告装置の本件特許発明に対応する構成を分説すると次のとおりである。
(一)<1> モーター(1)によって駆動される芯加圧棒(i)を備え、
<2> 複数のエンピツ芯をそれぞれ芯ホルダ(d)に収納し、所望の芯ホルダ(d)を前記芯加圧棒(i)と同軸線上に移動し得る
エンピツ芯用画線ヘッド(b)において
(二) 前記芯ホルダ(d)の作画面垂直方向の移動ストロークを約一・五ミリメートルと約二・八ミリメートルとに切換えることを特徴とするエンピツ芯用画線ヘッド(b)
4 被告装置は、次のとおり、本件特許発明の技術的範囲に属する。
(一) 構成要件A<1>について
被告装置のエンピツ芯用画線ヘッド(b)は、ワイヤ(k)を介して駆動源であるモーター(1)によって駆動される芯加圧棒(i)を備えている。
よって、被告装置は、本件特許発明の構成要件A<1>を充足する。
(二) 構成要件A<2>について
(1) 本件特許発明は、画線ヘッドを対象としているが、その構成要件A<2>のうち「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、」の部分は、「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動製図機用画線ヘッド」という構成を記述する前提として、複数のエンピツ芯がそれぞれ複数の芯ホルダに収納されていることを記述しているだけであって、これら複数の芯ホルダが画線ヘッドに搭載されていなければならないという限定は存在しない。
そして、被告装置では、複数のエンピツ芯がそれぞれ複数の芯ホルダ(d)に収容されているから、本件特許発明の構成要件A<2>のうち「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、」の構成を充足している。
(2) また、構成要件A<2>のうち「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動製図機用画線ヘッド」の部分は、画線ヘッドが消耗性筆記用芯の画線ヘッドとして機能するために、所望の芯ホルダを芯加圧棒と同軸上に移動し得ることを規定しているが、右構成は、芯加圧棒と芯ホルダが相対的に移動して画線動作が可能なように両者が同軸線上に位置することができる画線ヘッドであることを意味しているにすぎない。本件特許発明においては、複数の筆記具を交換する方式がターレット方式に限られるものではなく、「ヘッドが取りに行く」方式も包含しているのであり、画線ヘッドがターレットを装備するという限定は存在しないのであるから、どのような手段で所望の芯ホルダを芯加圧棒と同軸上に移動するかについても限定は存在しない。
そして、被告装置においては、画線ヘッド(b)によってペンシルストッカ(a)に保持されている所望の芯ホルダ(d)が芯加圧棒(i)と同軸上に受け取られるのであるから、本件特許発明の構成要件A<2>のうちの「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」の構成を充足している。
(3) このように、被告装置は、複数のエンピツ芯をそれぞれ芯ホルダ(d)に収納し、搭載したペンシルストッカ(a)が被告装置の本体左端部に位置し、エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、所望の芯ホルダ(d)が搭載されたペンシルストッカ(a)の所定の位置に対し移動して、ガイド(m)がバネ(g)を押し上げ、芯ホルダキャッチャ(h)が所望の芯ホルダ(d)を芯加圧棒(i)と同軸線上に保持し、さらにムービングコイル(j)により芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル下降させ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)の各下面にある凹部(o)から芯ホルダ(d)の上下のツバ(p1、p2)を解放し、そして所望の芯ホルダ(d)を芯加圧棒(i)と同軸線上に保持したまま、ペンシルストッカ(a)から離れることができる。
よって、被告装置は、本件特許発明の構成要件A<2>を充足する。
(三) 構成要件Bについて
(1) 構成要件Bの「前記芯ホルダの図板面垂直方向のストロークを少なくとも大小二段に切換える」とは、芯ホルダと芯加圧棒を独立に制御することを前提として、芯ホルダのストロークを少なくとも大小二段に切り換えることにより、画線作業時と芯ホルダ交換時において異なるストローク制御を行うことをいうものであるが、右の大小二段のストロークの各々がどこからどこまでのストロークであるかということは、本件特許発明の本質的な要素ではない。
そして、被告装置においても、芯ホルダ(d)はムービングコイル(j)によって芯加圧棒(i)とは独立に制御され、そのストロークを少なくとも大小二段に切り換えることができ、画線作業時には一・五ミリメートルのストロークを、芯ホルダ交換時には二・八ミリメートルのストロークを昇降するように制御されている。
(2) すなわち、被告装置においては、エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、画線作業時においては画線動作状態(以下、このときの芯ホルダの位置を「ペンダウン位置」という。)と待機状態(以下、このときの芯ホルダの位置を「ペンアップ位置」という。)の間で約一・五ミリメートルのストロークで芯ホルダ(d)を回転ドラム上の作画面に対し垂直に上下に移動せしめ、また、芯ホルダ交換のために芯ホルダ(d)をペンシルストッカ(a)に戻す動作においては、芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル上昇せしめ(以下、このときの芯ホルダの位置を「最上昇位置」という。)、芯ホルダ(d)をペンシルストッカ(a)から取り出す動作においては、芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル下降せしめることのできる自動製図機用画線ヘッドである。
よって、被告装置は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。
(四) 右のとおり、被告装置のエンピツ芯用画線ヘッドは、エンピツ芯使用時において、芯ホルダ交換のために必要な約二・八ミリメートルの上下移動ストロークよりも小さい約一・五ミリメートルの上下移動ストロークで画線作業を行うことができ、エンピツ芯用画線ヘッドによる高速画線処理を達成しているから、本件特許発明の作用効果を用いている。
5(一) 訴外デルフアイの取得した不当利得返還請求権
(1) 被告は、昭和六〇年四月から昭和六二年一月一三日までの間、少なくとも次のとおり、被告装置の販売を行った。
昭和六〇年四月から同年一〇月までの期間
型番F-六〇〇(小売価格二九〇万円) 販売台数 四四一台
型番F-九〇〇(小売価格三五〇万円) 販売台数 四九台
昭和六〇年一〇月から昭和六二年一月一三日までの期間
型番F-六〇〇b(小売価格一九八万円) 販売台数 一五二七台
型番F-九〇〇b(小売価格二二八万円) 販売台数 一七〇台
右期間における被告装置の小売総売上高は、四八億六一四六万円であり、被告装置の工場出荷額の小売価格に対する割合は、五〇パーセントを下らないから、右期間における工場出荷額の合計は、二四億三〇七三万円を下らない。
(2) エンピツ芯用画線ヘッドの被告装置全体に対する寄与率は三〇パーセントを下らない。
よって、これを右工場出荷総額に乗じると、七億二九二一万九〇〇〇円となる。
(3) 本件特許権の実施料率としては、被告装置の工場出荷価格に寄与率をかけた額の三パーセントが相当である。
よって、これを右金額に乗じると、二一八七万六五七〇円となる。
(4) 被告は、右期間の被告装置の製造販売につき、訴外デルフアイに対し本件特許権の実施料を支払うべきであったにもかかわらず、これを支払っていない。
よって、被告は訴外デルフアイに対し実施料の支払いをしないことによる利得を得、訴外デルフアイは被告から実施料の支払いを受けないことによる損失を被っているから、訴外デルフアイは被告に対し、民法七〇三条に基づき実施料相当額二一八七万六五七〇円の不当利得返還請求権を取得した。
(5) 原告は、昭和六二年一月一三日、訴外デルフアイから右不当利得返還請求権を譲り受けた。訴外デルフアイは、被告に対し、平成七年九月四日に被告に到達した内容証明郵便により右不当利得返還請求権の全額についての債権譲渡通知をなした。
(二) 原告の取得した不当利得返還請求権
(1) 被告は、昭和六二年一月一四日から平成三年一〇月までの間、少なくとも次のとおり、被告装置の販売を行った。
昭和六二年一月一四日から昭和六三年二月までの期間
型番F-六〇〇b(小売価格一九八万円) 販売台数 三五八八台
型番F-九〇〇b(小売価格二二八万円) 販売台数 三九九台
昭和六三年三月から平成二年一月までの期間
型番F-六一〇P(小売価格二一八万円) 販売台数 七九三八台
型番F-九一〇P(小売価格二四八円) 販売台数 八八二台
平成二年二月から平成三年一〇月までの期間
型番F-六二〇P(小売価格二一八万円)及び型番F-六二〇PR(小売価格二四八万円)
合計販売台数 一万四九九四台
型番F-九二〇P(小売価格二四八万円)及びF-型番九二〇PR(小売価格二七八万円)
合計販売台数 一六六六台
右期間における被告装置の小売総売上高は、六四三億二四七六万円であり、被告装置の工場出荷額の小売価格に対する割合は、五〇パーセントを下らないから、右期間における工場出荷額の合計は、三二一億六二三八万円を下らない。
(2) エンピツ芯用画線ヘッドの被告装置全体に対する寄与率は三〇パーセントを下らない。
よって、これを右工場出荷総額に乗じると、九六億四八七一万四〇〇〇円となる。
(3) 本件特許権の実施料率としては、被告装置の工場出荷価格に寄与率をかけた額の三パーセントが相当である。
よって、これを右金額に乗じると、二億八九四六万一四二〇円となる。
(4) 被告は、右期間における被告装置の製造販売につき、原告に対し本件特許権の実施料を支払うべきであったにもかかわらず、これを支払っていない。
よって、被告は原告に対し実施料の支払いをしないことによる利得を得、原告は被告から実施料の支払いを受けないことによる損失を被っているから、原告は被告に対し、民法七〇三条に基づき実施料相当額二億八九四六万一四二〇円の不当利得返還請求権を有している。
6 よって、原告は、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、三億一一三三万七九九〇円及びこれに対する本件訴状送達の日である平成七年八月八日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 請求原因2(一)の事実は認め、同2(二)の事実は争う。
3 請求原因3の事実は認める。
4 請求原因4(一)の事実は認める。これは公知技術である。
同4(二)の事実は否認する。被告装置のエンピツ芯用画線ヘッドにない構成を本件特許請求の範囲のヘッドと対比することは誤りである。
同4(三)の事実は否認する。被告装置のストロークは、本件特許発明の大小ストロークと意味が異なる。
同4(四)の事実は否認する。
5 請求原因5の事実は争う。
三 被告の主張
1 本件特許発明の先行技術
本件特許出願前の公知技術として、駆動源によって駆動される芯加圧棒を備え、複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、所望の芯ホルダを芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動画線ヘッドにおいて、小ストロークで芯ホルダ(ペンシル)を昇降制御する画線ヘッドがあった(乙第一号証)。
また、作画のための第一のストローク(全ストロークの約半分で図面中約二ミリメートルのストローク)と筆記具交換のための右第一ストロークより大きな第二のストローク(全ストロークの約半分で図面中約四ミリメートルのストローク)とを備えたターレット式画線ヘッドがあった(乙第二号証)。このターレット式画線ヘッドの筆記具としては、ペン、鉛筆(ペンシル)、けがき針などを含むものであるとされている。芯ホルダ(ペンシル)による作画も、ペンによる作画もともに、芯ホルダ及びペン先ホルダをアップダウンさせて鉛芯及びペン先を作画面に対して当接及び離反させて作画する点で共通であり、同一の技術分野であり、当業者は、画線ヘッドの筆記具として、いずれを選択するかは全く自由である。
そして、乙第一号証と乙第二号証は、いずれも同一技術分野におけるターレット式のプロッタのヘッドに関するものであり、乙第一号証のプロッタの機構に乙第二号証のストロークの機構を用いることは当業者が極めて容易に選択し得るものである。
2 構成要件A<2>の非充足性
(一) 本件特許発明の構成要件A<2>のうち、「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し」の構成について
本件特許発明は、「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し・・・た画線ヘッド」を必須の構成要件としているのに対し、被告装置の画線ヘッドは、一本の消耗性筆記用芯を収納することができるにすぎず、複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納しているものではない。
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の対象について「本発明は、電算機出力により消耗性筆記用芯・・・を用い、紙面に自動製図せしめる画線ヘッドに関する。」(本件公報2欄八行目ないし一〇行目)と明示され、「なお詳しくは各種径のエンピツ芯をそれぞれ適合する芯ホルダに収納し、該芯ホルダを円筒形ドラム等に配列したターレットを装備し・・・(た)画線ヘッドに関するものである。」(本件公報2欄一〇行目ないし一七行目)と記載されており、この記載から、本件特許発明は、「画線ヘッド」の発明であり、かつ、「各種径のエンピツ芯をそれぞれ適合する芯ホルダに収納し、該芯ホルダを円筒形ドラム等に配列した『ターレット』を装備した画線ヘッド」を対象とするものであることは明らかである。そして、本件明細書の従来技術の説明及び実施例とその図面も画線ヘッドにターレットを有するもののみが記載されており、本件明細書の詳細な説明の記載がすべてターレットを有する装置を前提としていること、「画線ヘッド」とはターレットを含むものとして説明、図示されていること、複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納しているのは画線ヘッドのターレットであることからして、画線ヘッドに複数の消耗性筆記用芯が備わっていると解釈するべきである。本件特許発明では、画線ヘッドのターレットは回転ドラムで構成され、この回転ドラムにエンピツ芯が取り付けられていて画線作業を行うのである。
これに対し、被告装置の画線ヘッドには、ターレットが存せず、一本の消耗性筆記用芯を一本の芯ホルダに収納したものである。そのため、被告の画線ヘッドは、「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し」た構成を備えていない。
(二) 構成要件A<2>のうち「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動製図機用画線ヘッド」の部分について
(1) 右構成要件の「芯ホルダ」を「芯加圧棒と同軸上に移動し得る」という記載は、本件特許発明がターレット、すなわち回転ドラムに芯ホルダを備えた画線ヘッドであることを前提とした記載である。本件特許発明のように画線ヘッドの構成としてターレットすなわち芯ホルダを備えた回転ドラムがある場合には、このターレットが回転し、この回転によって回転ドラムに装着された所望の「芯ホルダ」を「芯加圧棒と同軸上に移動し得る」のである。
これに対し、被告装置の画線ヘッドは、ターレットすなわち回転ドラムを備えていないので、所望の芯ホルダを芯加圧棒と同軸上に移動し得る構成を備えていない。すなわち、被告装置の画線ヘッドは、それ自身では芯ホルダ交換の構成を備えておらず、所望の芯ホルダは、画線ヘッドとは別体の、プロッタの機体の非作画領域に設けたペンシルストッカが保持しており、このペンシルストッカに保持された芯ホルダは、画線ヘッドの芯加圧棒に対して接近及び離反する方向に移動はできない。そのため、被告装置は、所望の芯ホルダを芯加圧棒と同軸上に移動させるのではなく、画線ヘッドを移動して、この画線ヘッドが、芯ホルダをペンシルストッカに返却し、かつ、所望の芯ホルダをペンシルストッカへ取りに行かなければならない。このように、被告装置において所望の芯ホルダを画線ヘッドに装着するための構成は、画線ヘッドを移動制御する機構と、非作画領域に配設されたペンシルストッカ及びペンシルストッカ回転駆動機構とから構成されるが、これらの機構は、画線ヘッドの構成ではない。
したがって、被告装置は、本件特許発明の構成要件A<2>の「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」構成を充足しない。
(2) 原告は、「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動製図機用画線ヘッド」の構成は、芯加圧棒と芯ホルダが相対的に移動して画線動作が可能なように両者が同軸線上に位置することができる画線ヘッドであることを意味しているにすぎない旨主張する。
しかし、特許請求の範囲の記載は、「芯ホルダ」が「芯加圧棒と同軸上に移動し得る」のであって、「芯加圧棒と同軸上に」「芯ホルダを取り付ける」と記載されているのではない。また、そもそも本件明細書の記載は、実施例を含めて右相対移動が可能となるような記載は全くなく、すべて芯ホルダが芯加圧棒と同軸上に移動する構成であるから、原告の右主張はなんら合理的根拠を有しない。
(三) したがって、被告装置は、構成要件A<2>を充足しない。
3 構成要件Bの非充足性
(一) 被告装置の画線ヘッドは、本件特許発明の大ストロークに相当するストロークを備えておらず、この要件も備えていない。
(1) すなわち、本件特許発明では、小ストロークが作画動作のためのストロークをいうのに対し、大ストロークとは、芯ホルダ交換のためのストロークで、作画位置から芯ホルダ交換位置へ、また、芯ホルダ交換位置から作画位置までの移動を意味している。
これは、本件明細書において、第5図Aで矢印で示されている小ストロークと第5図Bで矢印で示されている大ストロークとを比較して見れば明らかである。また、第5図Bの説明では、大ストロークを作動させるには、「・・・電磁石21を励磁してから電磁石8の励磁を停止する。この場合アーマチュア9はばね9bにより全ストロークをはね上がりその結果芯ホルダ5はばね7の働きにより第5図Bに示す『ストローク大』の距離を上昇してガイド10より完全に離脱し回転ドラム3は回転可能な状態となる」(本件公報6欄一行目ないし一二行目)とされている。つまり全ストロークをはね上がるのが「大ストローク」である。もっとも、本件明細書には、芯ホルダ交換時の下降の際の作動の説明がないが、アーマチュアの構成からして、全ストロークを下降するという動作以外ない。要するに、本件特許発明の大ストロークというのは、本件明細書の第5図Bで記載されているような全ストロークを指すことは明らかである。
また、このことは、本件特許の無効審判(昭和六〇年審判第一五五七七四号)において、原告が、本件特許発明の大小二段のストロークの大ストロークとは本件明細書の第5図Bに示されるストロークである旨主張していることからも明らかであり、原告が、被告装置における画線作業時の一・五ミリメートルのストロークと芯ホルダ交換時の二・八ミリメートルのストロークとを比較して、小ストローク、大ストロークを論じるのは、無効審判における原告の主張と背反するものであり、禁反言の原則により許されない。
(2) また、特許請求の範囲の記載だけで、この「少なくとも大小二段に切換える」という意味を理解することはできない。「大小二段」とは、どのような技術的意味を有するかを本件明細書の詳細な説明や図面で理解することこそ、特許請求の範囲の解釈であり、技術的範囲の判断である。このような解釈が特許法七〇条一項に反するということはない。
ところで、芯ホルダ交換時のストロークは全く任意に選択し得る事項であるところ、被告装置の画線作業時のストロークは一・五ミリメートルで、芯ホルダ交換時のストロークは二・八ミリメートルであるけれども、後者を一・五ミリメートルとし、あるいは二ミリメートルとしても作用効果は全く同一であり、実質的な差異は全くない。そして、被告装置においては、芯ホルダ交換時のストロークは一・五ミリメートルで充分であり、芯ホルダ交換時のストロークを画線作業時のストロークよりも大きくしなければならない必然性は全くない。
「大小二段のストローク」が、単に二つのストロークの大小をいうとすると、画線作業時のストロークと芯ホルダ交換時のストロークのどちらが大きいかは単に設計上の問題であるのに、なぜ後者が前者より大でなければならないか、技術的に全く意味不明になってしまい、無意味な限定が請求の範囲に記載されていることになる。
「大小二段のストローク」の意味を、特許法七〇条二項の規定に従い、本件明細書の詳細な説明、図面を参酌して理解すれば、本件公報第5図Aに示されるように作画のためにペンダウン位置から作画に必要な範囲で昇降するストロークと、同第5図Bに示されるように芯ホルダ交換のためにペンダウン位置から、ターレットの回転を妨げるヘッドの障害物をクリアするように昇降する大きなストロークを意味することは明らかである。
ストローク小を説明する第5図Aは、作画のために必要なストローク、すなわち作画面から作画のための待機位置までのストロークを、また、ストローク大を説明する第5図Bは、作画面から芯交換のための最上昇位置までを示しており、それが待機位置を基準に大小とする根拠となるような記載は全く存在しない。
(3) 画線ヘッドの具体的な画線作業時のストロークがどの程度になるかは機械によっても違うし、その時々の技術水準によっても変化する。一方芯ホルダ交換のためにどの程度のストロークを要するかは、交換する芯ホルダを収納する機構の問題であって絶対的に画線作業時のストロークより大きくなければならないという根拠は存在しない。特に芯ホルダを画線ヘッドに設けないものにあっては、水平に芯ホルダの収納場所に押し込む機構を設けてもよいのであり、あるいは下に押し付けて脱着する機構さえ考えられる。芯ホルダ交換にあたって芯ホルダを上下にすること自体必須ではない。被告装置でも、画線作業時のストロークと芯ホルダ交換時のストロークとの大小はペンシルストッカの設計上の問題にすぎない。
(4) これに対して、被告装置の画線ヘッドにおいては、芯ホルダは、作画のため、ペンアップ位置とペンダウン位置との間の一・五ミリメートルの距離を上下動する。そして、芯ホルダ交換の際には、ペンアップ位置にある画線ヘッドがペンシルストッカの位置まで移動し、そこで芯ホルダは改めて最上昇位置まで二・八ミリメートルの距離を上昇する。
このように、被告装置の画線ヘッドにおいては、芯ホルダの図板面垂直方向のストロークは、ペンダウン位置とペンアップ位置との間を上下動する作画のためのストロークと、ペンアップ位置と最上昇位置との間を上下動する芯ホルダ交換のためのストロークからなる二ストロークを行うものであり、本件特許発明の、芯ホルダのペンダウン位置と最上昇位置との間の全ストロークを上下動する、芯ホルダの交換のための大ストロークに相当するストロークを具備していない。
(二) また、本件特許発明の芯ホルダのストロークは、「図板面垂直方向」と規定され、図板が必須要件となっているのに対し、被告装置は、作図を行うための図板を具備していない。
すなわち、本件特許発明は、図板を必須要件とするフラットベッド型(平板型)自動製図機であり、被告装置は、図板を備えず、回転ドラム上で用紙に作図を行うペーパームービング(用紙駆動型)自動製図機であり、両者は全く異なったタイプの自動製図機を構成する。
被告装置において、芯ホルダの画線作業時のストロークは、回転ドラムの用紙と接する線に対して垂直な方向のストロークであり、図板面垂直方向のストロークではない。また、芯ホルダ交換時のストロークは、回転ドラムから外れた、非作画領域で行われるため、そこには図板はおろか、回転ドラムさえもなく、ストロークの方向の基準となるものがない。
(三) したがって、被告装置は、本件特許発明の構成要件Bを充足しない。
四 被告の主張に対する原告の反論
1 被告の主張1(先行技術)について
乙第一号証は、本件特許発明と同じ消耗性筆記用芯によって画線を行うエンピツ芯用画線ヘッドではあるが、その芯ホルダのストロークは本件特許発明の特徴的構成と異なり、単一のストロークである。そして、単一ストロークという点では本件明細書で説明されている従来技術と同様であるが、乙第一号証に開示されている技術は芯ホルダの降下を芯加圧棒によって行っており、本質的に芯ホルダは単一ストロークしかとり得ない構造となっている。
また、乙第二号証は、そもそも消耗性筆記用芯によって画線を行うエンピツ芯用画線ヘッドではなく、芯ホルダと芯加圧棒が存在しない。乙第二号証の筆記具はインクを用いたそれ自体の消耗がない尖筆(スタイラス)で、スタイラス自体が昇降するようになっている。そのストロークの機構は、スタイラスのキャップ部材をばねに抗して上からローラで押し下げて(ちょうどノック式ボールペンのように)スタイラスの昇降を行うものであるから、乙第二号証の機構は、芯ホルダに収納された消耗性筆記用芯を芯ホルダと同一軸線上において芯加圧棒で押圧するエンピツ芯用画線ヘッドとは機構的に両立し得るものではない。したがって、乙第一号証のプロッタ機構に乙第二号証のストローク機構を組み合わせることは技術的に不可能であり、被告の組み合わせの主張は成り立たない。
さらに、乙第二号証には筆記具自体についての二つのストロークが開示されているが、前記のとおり乙第一号証は構造上単一のストロークしかとり得ないものであるから、乙第一号証と乙第二号証を組み合わせて二つのストロークを有するエンピツ芯用画線ヘッドを実現することも不可能である。したがって、この点においても被告の組み合わせの主張は成り立たない。
2 被告の主張2(構成要件A<2>)について
(一) 本件特許発明の構成要件A<2>のうち「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、」の構成について
(1) 本件特許発明の右構成要件の記載を「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し・・・た画線ヘッド」と読むことは誤りである。特許請求の範囲の記載において、「収納」という言葉は「芯ホルダ」と「消耗性筆記用芯」の関係、すなわち、エンピツ芯がそれぞれ芯ホルダに収納されていることを表しているのであって、「画線ヘッド」と「芯ホルダ」の関係を表したものではない。右構成要件においては「複数の芯ホルダ」が「画線ヘッド」に搭載されているか否かについては何ら限定されていないのである。
(2) 特許発明の技術的範囲の解釈は、特許請求の範囲の記載に基づいてなされなければならないことは特許法の基本原則である(特許法七〇条一項)。実施例の画線ヘッドにはターレットが装備されている例が記載されていても、特許請求の範囲の記載中にはターレットの限定が明確に存在せず、出願手続や無効審判手続においてもそのような特許請求の範囲に記載された発明を対象にして審査、審判がなされ、本件特許発明の特許性が認められているのである。したがって、特許請求の範囲にはターレットの限定が存在しないにもかかわらず、発明の詳細な説明にターレットの記載があることを理由に、本件特許発明の画線ヘッドがターレットを備えたものと限定解釈することはできない。
(3) 本件特許発明の特徴は、消耗性筆記用芯の画線ヘッドにおいて、公知技術のように芯ホルダを単一ストロークで昇降するのではなく、芯加圧棒と芯ホルダを独立に制御する技術を前提として、芯ホルダのストロークを少なくとも大小二段に切り換えて昇降する構成にあり、それによって画線作業能率が向上するところにある。したがって、複数のエンピツ芯を収納した芯ホルダが画線ヘッドに装備されたターレットに搭載されているということは、本件特許発明の必須構成要件ではない。本件特許発明の特許請求の範囲にターレットの限定が付されていないことは、このことを示しているものであり、本件特許発明の技術的範囲の解釈において、画線ヘッドをターレットを装備したものに限定しようとすることは論外であり、不当である。
(4) 自動製図機の技術分野において、本件特許出願当時、複数の筆記具を交換する方式として、ターレット方式ばかりでなく、画線ヘッドの外部に装備されている複数の筆記具に対し画線ヘッドが移動してその中から所望の筆記具を画線ヘッドに装着する、すなわち「ヘッドが取りに行く」方式が知られていた。したがって、本件明細書には芯ホルダを交換する他の方式について言及していないが、当業者は本件特許請求の範囲の記載がターレット方式に限定されないことを理解できるのであり、本件特許発明は、本件特許出願当時に知られていたターレット方式と「ヘッドが取りに行く」方式のいずれと組み合わせることも可能である。
また、本件特許発明の核心は、芯加圧棒と芯ホルダを有する芯交換方式のエンピツ芯用画線ヘッドにおいて、芯ホルダのストロークを少なくとも大小二段に切り換えることであり、本件特許発明の作用効果は、画線作業時と芯ホルダ交換時で芯ホルダのストロークを切り換えることによって実現されるものであるから、交換用の複数の芯ホルダがどこに貯えられているかは本件特許発明にとって必須の前提条件ではない。したがって、本件明細書を当業者が読めば、実施例で説明されているターレット方式が芯ホルダの交換方式として本件特許発明に必須なものではないことを明らかに理解できるのであり、当業者の読み方によって本件明細書を参酌すれば、被告の限定解釈は成り立たない。
(二) 本件特許発明の構成要件A<2>のうち「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動製図機用画線ヘッド」の構成について
(1) 構成要件A<2>につき、画線ヘッド(芯加圧棒)は静止して芯ホルダが動かなければならないという、本件特許請求の範囲に記載されていない限定を付して解釈することは不当である。
(2) 本件特許請求の範囲の記載において「プレアンブル」(発明の前提部分、おいて書き)の項で画線ヘッドについて規定されていることは「芯加圧棒を備え」ていることと、「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」ことだけであり、移動のための機構が全て画線ヘッド上になければならないという限定は存在しない。
画線ヘッドはそれ自体のみで自動製図を行えるものではなく、自動製図機の他の機構と組み合わされてはじめてその動作が可能となるものであることはいうまでもない。特に、画線ヘッドの動作が画線ヘッドの外部にあるコンピュータのような制御機構によって制御されるのは技術上当然の前提であるから、本件特許請求の範囲に記載された「画線ヘッド」が画線ヘッド上に装備された機構のみによって自己完結的に機能しなければならないという解釈は不当である。
本件特許請求の範囲における「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」との記載は、当然に画線ヘッドがその外部にある制御機構によって制御されることを前提としており、何らかの手段により所望の芯ホルダを画線ヘッド上にある芯加圧棒と同軸上に移動し得るならば、右の構成要件は充足されるものと解すべきである。
3 被告の主張3(構成要件B)について
(一) 「大ストローク」について
(1) 本件特許請求の範囲には「芯ホルダの・・・ストロークを少なくとも大小二段に切換える」と記載されているだけであって、そもそも「大ストローク」という表現すら使われておらず、特定の位置におけるストロークを「大ストローク」として限定してはいない。
(2) また、本件特許発明は、画線作業時のストロークと芯ホルダ交換時のストロークを切り換えることによって能率的な画線動作ができることを作用効果としており、芯ホルダ交換時にどのようなストロークを採用するかは、本件特許発明を実施するに当たって当業者が任意に選択しうる設計事項であり、本件特許の実施例が作画面から芯ホルダ交換時の高さまでのストロークを説明しているからといって、それだけの理由で本件特許発明の「ストロークを少なくとも大小二段に切換える」という要件を実施例に説明された具体的な位置関係のストロークに限定して解釈しなければならないことはない。
そして、被告装置においても、芯ホルダ(d)はムービングコイル(j)によって芯加圧棒(i)とは独立に制御され、そのストロークを少なくとも大小二段に切り換えることができ、画線作業時には一・五ミリメートルのストロークを、芯ホルダ交換時には二・八ミリメートルのストロークを昇降するように制御されている。
(3) また、「少なくとも大小二段に切換える」とは、芯ホルダのストロークを少なくとも大小二段に切り換えることにより、画線作業時と芯ホルダ交換時において異なるストローク制御を行うことをいうものであり、二つのストロークの位置は関係なく、単にストロークが大か小かで判断すべきである。
被告装置においても画線作業時のストロークはその画線能率を向上させるためにできるだけ小さいことが望ましく、他方、芯ホルダ交換時のストロークは確実な芯ホルダの返却動作のために画線作業時のストロークより大きいストロークであることが望ましい。すなわち、この両ストロークの大小関係は技術的に意味をもっている。
被告装置の芯ホルダ交換時のストロークが実施例の第5図Bのように作画動作のペンダウン位置を下端位置とするのと異なり、作画動作時のペンアップ位置を下端位置とするストロークであっても、被告装置の芯ホルダ交換時のストロークが画線作業時のストロークとは異なる、より大きいストロークであることにおいては変わらず、本件特許発明の「大小二段」のストロークとなっている。
(二) 「図板面垂直方向」について
図板面とは、作画のために筆記用具が紙に接触する紙の面であり、本件特許発明の「芯ホルダの図板面垂直方向のストローク」とは、作画する紙の面に垂直な方向のストロークのことを意味していることは明らかである。図板面は、フラットベッド型であろうと、ペーパームービング型であろうと存在する。ペーパームービング方式では「芯ホルダの図板面垂直方向のストローク」が存在しないなどということはできない。筆記具が紙面に垂直に保持されて作画されるものである点ではフラットベッド型もペーパームービング型も同じであり、筆記具が紙面に垂直に保持される、その方向が「図板面垂直方向」である。
第三 証拠関係
本件訴訟記録の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 請求原因1、2(一)及び3の事実は、いずれも当事者間に争いがない。
二 請求原因4について判断する。
1 請求原因4(一)(構成要件A<1>の充足性)の事実は当事者間に争いがない。
2 請求原因4(二)(構成要件A<2>の充足性)について
(一) 別紙目録によれば、被告装置は、複数のエンピツ芯がそれぞれ芯ホルダ(d)に収納されており、芯ホルダキヤッチヤ(h)が所望の芯ホルダ(d)を芯加圧棒(i)と同軸上に保持するものであることが認められ、右事実によれば、被告装置は、「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」ものといえる。
(二) 被告は、本件特許発明の画線ヘッドはターレットを装備したものであるのに対し、被告装置の画線ヘッドはターレットを備えていないから、「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し」を充足しない旨主張する。
しかしながら、本件明細書の特許請求の範囲には「ターレット」なる文言は存在しないうえ、本件特許発明の構成要件A<2>の「複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、」及び「芯ホルダを芯加圧棒と同軸上に移動し得る」という記載から理解される構成は、複数の芯ホルダが芯加圧棒と同軸上に移動し得る場所に配置されているといった程度のことであり、右記載から本件特許発明は複数の芯ホルダが「ターレット」に保管されている構成に限定されるということはできず、また、右構成要件A<2>の記載の意味が不明確で、発明の詳細な説明を参酌しなければ理解できないわけでもない。
いずれも成立に争いのない甲第一三号証、甲第一四号証、乙第六号証な いし第一一号証によれば、タレット(ターレット)とは、二個以上の工具を放射状に取り付け、旋回割出しを行う刃物台をいい、タレットに切削工程に応じて工具を取り付け、タレットを回転させるたびに各工具が切削部分に応じた位置に来るようになっている旋盤をタレット旋盤ということが認められるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には「ターレットを装備し」との記載があり、実施例や図面においても画線ヘッドがターレットを含むことを前提に記載されているけれども、本件特許発明の特許請求の範囲に「ターレットを装備すること」が記載されていない以上、画線ヘッドがターレットを備えたものに限定されると解釈することはできない。
したがって、被告の右主張は採用することができない。
(三) また、被告は、被告装置の画線ヘッドはそれ自身では芯ホルダ交換の構成を備えておらず、所望の芯ホルダは非作画領域に設けられたペンシルストッカが保持しているが、ペンシルストッカは画線ヘッドの構成ではないから、本件特許発明の構成要件A<2>の「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」構成を充足しない旨主張する。
そこで、本件特許発明の構成要件A<2>の「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」の意味について検討するに、右の構成は、文言上は芯加圧棒が静止していて、該芯加圧棒に対して芯ホルダを同軸上に移動し得る、つまり芯ホルダが移動して同軸上に来ると解釈すべきものといえなくはない。
しかしながら、成立に争いのない甲第二号証によれば、本件特許発明が解決すべき課題として、「芯ホルダ5自身の上昇ストロークが単一ストロークであること、即ち画線ヘッドの移動のために芯ホルダ5を上昇せしめる場合にはエンピツ芯6が図面用紙2より完全に離れる程度の微小寸法・・・で機能を満足することができるのであるが、実際には芯ホルダ交換に必要なストロークと同一の大きなストローク・・・を与えている。この余分のストロークにより画線能率の低下をもたらしている。」(本件公報4欄七行目ないし一七行目)ことが挙げられ、本件特許発明の作用効果として「同一芯ホルダ5の画線のためのストロークは芯ホルダ5の交換のためのストロークに比し格段と小さくすることができる。」(本件公報6欄一四行目ないし一七行目)と記載されていることが認められる。右の事実に弁論の全趣旨を総合すれば、本件特許発明の技術課題は、従来技術において芯ホルダの画線のためのストロークと芯ホルダ交換のためのストロークが同一であったものを、画線作業時と芯ホルダ交換時で異なるストロークをとることが可能な構成とすることによって、芯ホルダ交換時にはそのために必要な大きさのストロークを確保し、画線作業時にはそれよりも小さなストロークをとることができるようにし、画線能率を向上させることにあったと認められるのであり、このような本件特許発明の技術課題に照らせば、「所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る」との構成について、右解釈しか許されないということはできず、芯加圧棒と新たに選択された芯ホルダとが相対的に移動することによって両者が同軸上に位置するようになるものも含まれるものと解すべきである。
そして、本件特許発明の画線ヘッドがターレットを装備したものに限定されないのは前記認定のとおりであるから、本件特許発明において、画線ヘッド自身が芯ホルダ交換の構成を備えている必要はなく、画線ヘッド、すなわち芯加圧棒が複数の芯ホルダの収納されている場所まで移動することにより芯ホルダと芯加圧棒とが同軸上に位置するようになる構成もまた本件特許発明の構成要件A<2>を充足するものということができる。
したがって、被告の前記主張は失当である。
(四) よって、被告装置は本件特許発明の構成要件A<2>を充足する。
3 請求原因4(三)(構成要件Bの充足性)について
(一) 本件特許発明の構成要件Bのうち「ストロークを少なくとも大小二段に切換える」ことの意味について検討する。
前掲甲第二号証、いずれも成立に争いのない乙第三号証ないし第五号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(1) 本件特許発明の特許請求の範囲には、「・・・ストロークを少なくとも大小二段に切換えること」の記載があるが、芯ホルダの「ストローク」の位置は記載されていない。
(2) 本件明細書の発明の詳細な説明の中の本件特許発明が解決すべき課題の部分(本件公報4欄七行目ないし一七行目)の記載中に、芯ホルダ5の「ストローク」の下端位置を示すものとして「芯ホルダ5を上昇せしめる場合にはエンピツ芯6が図面用紙2より完全に離れる程度の微小寸法」(本件公報4欄九行目ないし一一行目)との記載がある。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、芯ホルダ5のストロークについて、「第5図に示す『ストローク小』は芯ホルダ5の画線のために必要なストローク、『ストローク大』は芯ホルダ5の交換のために必要なストロークをそれぞれ示す。」(本件公報5欄一〇行目ないし一三行目)、「芯ホルダ5はばね7の働きにより第5図Bに示す『ストローク大』の距離を上昇してガイド10より完全に離脱し・・・」(本件公報6欄九行目ないし一一行目)と記載されている。そして、第5図A及び第5図Bには、それぞれ「ストローク小」、「ストローク大」が矢印で示され、いずれも下端位置には図面用紙が示されている。
さらに、本件特許発明における芯ホルダ5のストロークの大小二段中、大きい方のストローク(以下「ストローク大」という。)及び小さい方のストローク(以下「ストローク小」という。)の上端位置について、本件明細書には右記載の示す位置以外に上端位置を示す記載がない。
(3) 他方、ストロークを「大小二段に切換える」の「切換える」とは、一般に、一つの態様から別の態様へと変換することを意味するものと考えられるから、ストロークを「大小二段に切換える」とは、ストローク大という一つの態様とストローク小という別の態様が別個に存在し、これら二つの態様が互いに変換し合うことを意味するものと解される。
(4) 原告は、本件特許の無効審判において、「本件特許発明においては、前示した如く、芯ホルダ5が水平移動中及び画線位置までは本件第5図Aに示す様にストローク小の状態にあり、さらに芯交換や芯入れの時点では芯ホルダが第5図Bの状態になって大ストロークで紙面から離隔動作する大小二段のストローク切換が行われるものである。」と主張し、右審判の審決においても「本件特許・・発明のような芯ホルダが芯加圧棒と同軸上に移動し芯ホルダの図板面垂直方向のストロークを、画線ヘッド移動のために図面用紙より完全に離れる程度の微少寸法、例えば〇・五~一mm程度の寸法の小ストロークと芯ホルダ交換のために小ストロークより数倍のストロークの大ストロークの大小二段の別異なストロークに切換えるもので・・・同一芯ホルダの画線のため(の)ストロークは芯ホルダの交換のためのストロークに比し格段と小さくすることができる。またこのため加圧棒のストロークも小さくすることができ、同一芯ホルダによる製図能率を著しく向上せしめる」と認定された。
右認定の事実及び前記2(三)認定の本件特許発明の作用効果によれば、本件特許発明は、もともと画線のための芯ホルダの移動に際しても芯ホルダ交換時と同一のストロークで上昇させていたものを、上昇ストロークを小さくすることにより、製図能率を向上させることを目的とするものであり、右事実に発明の詳細な説明の記載を総合考慮すれば、芯ホルダ5の「ストローク」の位置については、その下端位置は、画線のためのストロークも芯ホルダ5の交換のためのストロークもともにエンピツ芯6が図面用紙2に圧接しているときの芯ホルダ5の位置であり、ストローク大の上端位置は、芯ホルダ5が交換可能な位置であって、具体的には芯ホルダ5がガイド10から完全に離脱する位置であり、ストローク小の上端位置は、エンピツ芯6が図面用紙2より完全に離れる程度の微小寸法の間隙を有しているような芯ホルダ5の位置であるものと解釈するのが相当である。
したがって、構成要件Bのうちの「ストロークを少なくとも大小二段に切換える」とは、右の位置で行われるストローク大とストローク小とを互いに変換することを意味するものであると解される。
(二) 次に、本件特許発明の構成要件Bのうち「図板面垂直方向のストローク」の意味について検討する。
本件特許発明の特許請求の範囲には「図板面垂直方向」にいう「図板面」の定義はなく、本件明細書の発明の詳細な説明の項にも「図板面」という用語は記載されていないが、「紙面」(本件公報2欄一四行目、一五行目)及び「図面用紙」(本件公報2欄二一行目、3欄七行目、一〇行目、一一行目、二八行目、4欄一〇行目、一一行目)という記載があることから、「図板面」とは図面用紙そのものを意味するものと解される。
そして、本件明細書中に「図板面を含む面」という記載はないから、「図板面垂直方向」とは、作画のために芯ホルダ(エンピツ芯)が接触する面上から垂直の方向をいうものと考えるべきである。
また、前記2(三)認定のとおり、本件特許発明の技術課題は、従来技術において芯ホルダの画線のためのストロークと芯ホルダ交換のためのストロークが同一であったものを、画線作業時と芯ホルダ交換時で異なるストロークをとることが可能な構成とすることによって、芯ホルダ交換時にはそのために必要な大きさのストロークを確保し、画線作業時にはそれよりも小さなストロークをとることができるようにし、画線能率を向上させることにあったと認められるのであり、このような本件特許発明の技術課題に照らすと、本件特許発明の構成要件Bにいう芯ホルダの「ストローク」は、図面用紙上における動作をいうものと解するべきであり、図面用紙上を外れた位置におけるストロークを右「ストローク」に含めて解釈するのは、本件特許発明の技術課題を無視するものであるといわざるを得ない。
したがって、「図板面垂直方向のストローク」とは、芯ホルダが図面用紙上から、すなわち、図面用紙外方に外れることなく、該図面用紙に対して垂直の方向に上下動するストロークを意味するものと解釈するのが相当である。
(三) そこで、被告装置について検討する。
(1) 別紙目録によれば、被告装置の画線動作状態から待機状態への動作は、
<1> 芯加圧棒(i)がワイヤ(k)を介してモータ(l)により上昇し、それに続いて芯ホルダキャッチャ(h)がムービングコイル(j)により芯ホルダ(d)を画線動作状態の位置から約一・五ミリメートル上昇させる
<2> この状態で、エンピツ芯用画線ヘッド(b)が左右に移動し、また回転ドラム(c)が回転して用紙を前後に移動することにより、エンピツ芯用画線ヘッド(b)は別の画線位置に移動する
<3> 次の画線動作に入るためには、芯ホルダ(d)を画線動作状態の位置まで約一・五ミリメートル下降させ、同様に芯加圧棒(i)をエンピツ芯上端まで下降してエンピツ芯を圧接するものであることが認められる。
このように、被告装置は、画線作業時において、ペンアップ位置を上端位置とし、ペンダウン位置を下端位置とする約一・五ミリメートルのストロークで、芯ホルダ(d)を回転ドラム(c)上の作画面に対し垂直に上下に移動させるのであり、ペンダウン位置において画線動作を行い、ペンアップ位置において画線ヘッドが別の画線位置に移動するのであるから、これは本件特許発明の構成要件Bの「ストローク小」に相当するものと解される。
(2) 次に、別紙目録によれば、被告装置の芯ホルダ交換のための動作は、
<1> 芯加圧棒(i)がワイヤ(k)を介してモータ(1)により上昇し、それに続いて芯ホルダキャッチャ(h)がムービングコイル(j)により芯ホルダ(d)を画線動作状態の位置から約一・五ミリメートル上昇させる
<2> 画線ヘッド(b)の位置を確認するために、画線ヘッド(b)はペンシルストッカ(a)の近傍にある座標原点(n)の位置まで移動する
<3> ペンアップ状態のまま画線ヘッド(b)をさらにペンシルストッカ(a)に向かって移動させ、エンピツ芯用画線ヘッド(b)のガイド(m)がバネ(g)に突き当たることによってバネ(g)を押し下げ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)のミゾに芯ホルダ(d)をはめ込みながら引き続きムービングコイル(j)を駆動させることによって芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル上昇させ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)の各下面にある凹部(o)に芯ホルダ(d)の上下のツバ(p1、p2)をはめ込む
<4> エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、芯ホルダキャッチャ(h)がその上昇状態を維持したままペンシルストッカ(a)から離れ、それに伴い芯ホルダ(d)が芯ホルダキャッチャ(h)からはずれて、ペンシルストッカ(a)に残る
<5> エンピツ芯用画線ヘッド(b)が、別の芯ホルダ(d)を受け取るためにはペンシルストッカ(a)が、所望の芯ホルダ(d)を所定位置に置くために回転した後、エンピツ芯用画線ヘッド(b)がペンシルストッカ(a)の位置まで移動し、ガイド(m)がバネ(g)を押し下げ、芯ホルダキャッチャ(h)が所望の芯ホルダ(d)を芯加圧棒(i)と同軸上に保持し、さらに、芯ホルダキャッチャ(h)が、ムービングコイル(j)により、芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル下降させ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)の各下面にある凹部(o)から芯ホルダ(d)の上下のツバ(p1、p2)を解放する。そして、エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、芯ホルダキャッチャ(h)が所望の芯ホルダ(d)を保持した状態で、ペンシルストッカ(a)から離れる
ものであることが認められる。
すなわち、芯ホルダ交換のために芯ホルダ(d)をペンシルストッカ(a)に戻す動作においては、芯ホルダ(d)をペンアップ位置から最上昇位置まで約二・八ミリメートル上昇させ、芯ホルダ(d)をペンシルストッカ(a)から取り出す動作においては、芯ホルダ(d)を最上昇位置からペンダウン位置まで約二・八ミリメートル下降させるというものであり、芯ホルダ交換のための約二・八ミリメートルのストロークは、ペンアップ位置を下端位置とするストロークである。
また、ペンシルストッカ(a)は回転ドラム(c)から外れた位置にあり、その近傍にある座標原点(n)も回転ドラム(c)から外れた位置にあるから、右約二・八ミリメートルのストロークは、回転ドラム(c)から外れた図面用紙外の位置で行われることになる。
してみると、被告装置の約二・八ミリメートルのストロークは、ペンアップ位置を下端位置としている点において、ペンダウン位置を下端位置とする、本件特許発明の構成要件Bの「ストローク大」とは異なるし、回転ドラム上に巻回されている図面用紙の外部の位置で行われる点において、図面用紙上から、該図面用紙に対して垂直の方向に上下動するストロークとはいえない。
(四) 原告は、芯ホルダ交換時のストロークは設計事項であり、位置は無関係で大小関係に意味がある旨主張するが、前記認定の本件特許発明の技術課題からすれば、ストロークの下端位置は画線中ペンダウン状態における芯ホルダ位置と解さざるを得ず、当業者の設計事項とはいえないし、被告装置の右ストロークの下端位置は、ペンアップ位置であるから、これを「ストローク大」ということはできない。
(五) したがって、被告装置は、本件特許発明の構成要件Bを充足しない。
4 よって、被告装置は本件特許発明の技術的範囲に属しない。
三 結論
以上のとおりであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高部眞規子 裁判官 榎戸道也 裁判官 中平健)
<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭56-54238
<51>Int.Cl.3B 43 L 13/00 識別記号 庁内整理番号 7513-2C <24><44>公告 昭和56年(1981)12月24日
発明の数 1
<54>自動製図機用画線ヘツド
<21>特願 昭54-107368
<22>出願 昭54(1979)8月23日
公開 昭56-30898
<43>昭56(1981)3月28日
<72>発明者 大谷泰三
東京都新宿区新宿1丁目9番1号
株式会社デルフアイ内
<72>発明者 菊川四郎
東京都新宿区新宿1丁目9番1号
株式会社デルフアイ内
<72>発明者 増渕隆
東京都新宿区新宿1丁目9番1号
株式会社デルフアイ内
<72>発明者 横沢敏
東京都新宿区新宿1丁目9番1号
株式会社デルフアイ内
<71>出願人 株式会社デルフアイ
東京都新宿区新宿1丁目9番1号
<74>代理人 弁理士 大塚康徳 外1名
<57>特許請求の範囲
1 駆動源によつて駆動される芯加圧棒を備え、複数の消耗性筆記用芯をそれぞれ芯ホルダに収納し、所望の芯ホルダを前記芯加圧棒と同軸上に移動し得る自動製図機用画線ヘツドにおいて、前記芯ホルダの図板面垂直方向のストロークを少なくとも大小2段に切換えることを特徴とする自動製図機用画線ヘツド。
2 ストロークを少なくとも大小2段に切換える手段が芯ホルダの移動方向に運動するアーマチユアをもつ第1の電磁石と、該第1の電磁石に対し交叉する方向に運動するアーマチユアをもつ第2の電磁石を備え、該第2の電磁石のアーマチユアを前記第1の電磁石のアーマチユアに掛外しする構成より成ることを更に特徴とする第1項記載の自動製図機用画線ヘツド。
3 駆動源の駆動を芯加圧棒に伝える駆動系がエンコーダを備え、該エンコーダから芯加圧棒の上昇量を定量的に検出し、前記駆動源の駆動を制御することを更に特徴とする第1項記載の自動製図機用画線ヘツド。
発明の詳細な説明
本発明は電算機出力により消耗性筆記用芯(以下エンピツ芯と略称)を用い、紙面に自動製図せしめる画線ヘツドに関する。なお詳しくは各種径のエンピツ芯をそれぞれ適合する芯ホルダに収納し、該芯ホルダを円筒形ドラム等に配列したターレツトを装備し、所定画線位置において下降する加圧棒によりエンピツ芯を紙面に接圧し、画線ヘツドを紙面に平行移動せしめることにより画線し、また芯ホルダ及び加圧棒の上昇により画線を終わる画線ヘツドに関するものである。
従来のこの種の装置の主要部を示す第1図の正面図について説明する。図において1は数値制御され紙面上を2軸移動する画線ヘツド、2は平板上の図面用紙、3は回転ドラムでその外周上に駆動のための歯車と図示してないが回転制御用の光電式エンコーダスリツトを設けている。4は駆動用モータでその軸上にピニオンを設けて回転ドラム3を回転せしめる。5は複数個の芯ホルダ、6はエンピツ芯で芯ホルダ5の中心にOリングを介して摩擦力により保持されている。7はコイルばねで芯ホルダ5を回転ドラム3に対し常時押し上げている。8は芯ホルダ5を押し下げる電磁石、9は同アーマチユアで電磁石8を励磁した時その端部で芯ホルダ5を押し下げる。10は芯ホルダ5が下降した際にこれに嵌合して画線の位置決めを行うガイド、11は芯加圧棒、12は加圧棒11の上下運動用ガイドレール、13は加圧棒11を上下せしめるためのワイヤロープ、14は2個の滑車、15は加圧棒11を上下動せしめるためのモータで、同一軸上に回転検出用の光電式エンコーダ用スリツト円板16を装着している。17は光電式エンコーダ用センサ、18はワイヤロープを滑動せぬよう数回〓きつけたプーリである。
次に本列の動作について説明する。先ず同一芯ホルダ5により画線する場合には電磁石8を励磁しそのアーマチユア9によりコイルバネ7に抗して芯ホルダ5を押し下げ、その先端は図面用紙2と微小間隙を保つて停止する。また同時にモータ15を駆動してワイヤロープ13、滑車14を介して加圧棒11を下降せしめエンピツ芯6を図面用紙2に圧接せしめて画線する。続いて芯ホルダ5を上昇せしめる場合は前記と逆順に加圧棒11を若干引き上げ、かつ電磁石8の励磁を止め芯ホルダ5を引き上げる。
次に画線によりエンピツ芯6が摩耗限に達したり、または他の太さのエンピツ芯6で画線する為に芯ホルダ5を他の芯ホルダ5と交換する場合には、先ず加圧棒11を芯ホルダ5から完全に抜き出し、モータ4によりドラム3を所望角度回転せしめて所望の芯ホルダ5を所定位置に停止せしめ、電磁石8を励磁し芯ホルダ5をガイド10に嵌合させる。次に加圧棒11を下降せしめる。この場合の加圧棒駆動用モータ15の動作を第2図のモータ入力電圧対時間軸図について説明する。先ずa点でモータ15を低電圧で駆動し、エンピツ芯6を漬さない程度の速度で加圧棒11を下降せしめる。加圧棒11の先端がエンピツ芯6を押し下げてその先端が図面用紙2に突き当りその負荷とモータ出力が釣り合つた時点bで運動が停止し、これを光学式エンコーダ用センサ17により検出しモータ入力を断とし直ちにC点で所定の逆電圧を所定時間印加して加圧棒11を微小寸法引き上げ、同時にアーマチユア9を開放してエンピツ芯6を保持した状態の芯ホルダ5を微小寸法引き上げる。この時点をd点にて示すが、c、d間の時間及び印加電圧は一定であるに拘らずその負荷が一定でない為、即ち芯ホルダ5と加圧棒11の摩擦負荷の変動、加工、組立、調整上の変動等により実際は一定とならない。この為芯ホルダ5の上昇ストロークよりも加圧棒11のストロークがかなり大きくなるように安全を見て設計製造する必要がある。このd点における状態が次に画線を開始するための待期姿勢(レデイ)である。次に製図命令によりe点にて電磁石8を励磁し芯ホルダ5を下降せしめると同時にエンピツ芯6を漬さない速度で加圧棒11を下降せしめ次いでエンピツ芯6に画線に適した筆圧を与えるように通常a、b間の電圧よりも大きい電圧をモータ15に印加する。
さて従来のこの種の画線ヘツドはその構造上次のような2つの欠点がある。その第1の欠点は芯ホルダ5自身の上昇ストロークが単一ストロークであること、即ち画線ヘツドの移動のために芯ホルダ5を上昇せしめる場合はエンピツ芯6が図面用紙2より完全に離れる程度の微小寸法、例えば0.5~1mm程度の寸法で機能を満足することができるのであるが、実際には芯ホルダ交換に必要なストロークと同一の大きなストローク即ち前記の微小ストロークの数倍のストロークを与えている。この余分のストロークにより画線能率の低下をもたらしている。
第2の欠点は同一芯ホルダ5の上記運動に付随して上下せしめる加圧棒11の上昇時のストロークの問題である。この上昇ストロークは特に厳密に制御せず一定時間モータ15を駆動することにより行つている。この場合加圧棒11が芯ホルダ5の内部に挿入されている長さ及び各種エンピツ芯の直径に対応する芯ホルダ5の内径及び芯ホルダ5と加圧棒11とガイドレール12との相互の平行度等による摩擦力の変動により加圧棒11の上昇ストロークは一定とすることは困難である。従つて前述のように芯ホルダ5の上昇ストロークより加圧棒11の上昇ストロークを少くとも変動分以上大きくする必要がある。従つてそれに伴い下降ストロークも増大する。しかもこの下降時の加圧棒11とエンピツ芯6との衝突による芯くずれを防止するために下降速度を上昇速度よりも著しく小さくする必要がある。そのために画線能率がだ低下している。
本発明はこれらの欠点を改良し画線能率を向上せしめるために行なわれたものでその好適な例として第3図にその正面図を、第4図に芯ホルダ5の上下運動のストローク切換えを示す部分斜視図を、第5図A、Bに芯ホルダ5の上昇時の2段ストロークの断面図を、第6図に加圧棒11の動作を説明する部分側面図をそれぞれ示す。各図中の参照番号は共通の対象を指すものである。
次にこれ等の構造及び動作を第3、4、5、6の各図について説明する。9aはアーマチユア9に設けた切り欠き部、9bはアーマチユア9の引張りばね、21は電磁石8と連けい動作する電磁石で、22はそのアーマチユア、22aはアーマチユア22に設けた凸起部で電磁石21を励磁した場合に切り欠き部9aと協働してアーマチユア9の先端のストロークが増大する構造となつている。23、24は加圧棒11の下限及び上限のリミツトスイツチ、25はエンピツ芯6を保持するゴム製Oリング。第5図に示す「ストローク小」は芯ホルダ5の画線のために必要なストローク、「ストローク大」は芯ホルダ5の交換のために必要なストロークをそれぞれ示す。
次に「ストローク小」の場合の動作を説明する。先ず面線終了の信号によりモータ15を逆転せしめて加圧棒11の引き上げを開始すると、光学式エンコーダ用スリツト円板16も同時に回転し光電式エンコーダ用センサ17によりパルス信号が得られる(第6図参照)。例えばこの発生パルス1個当りの加圧棒11のストロークが0.2mmとすれば5個のパルス発生時にモータ15の駆動を停止し、それに伴う慣性を無視すれば加圧捧11を1mm上昇し停止せしめることができる。ただし実際には慣性があるため、急加速、急停止せしめて所定位置に確実に停止せしめるよう本実施例においては光電式エンコーダ用センサ17の出力パルスの数個目より逐次モータ15に負帰還を掛けている。言業を変えればモータ15に大きさの異る正及び負極性のパルスを適宜印加して急速に所定位置に停止せしめる。またこれと同時に電磁石21を非励磁のまま電磁石8の励磁を中止しアーマチユア9を開放する。この時アーマチユア9の先端は凸起部22aに妨げられて中途で停止する。芯ホルダ5の頭部外緑部はアーマチユア9の先端で押えられているので、その結果芯ホルダ5はエンピツ芯6を保持したままばね7により「ストローク小」のみを上昇して停止する。この状態より再び画線を開始する場合は、電磁石8を励磁し芯ホルダ5を「ストローク小」だけ下降せしめると同時にエンピツ芯6を漬すことのない電圧でモータ15を駆動し、加圧棒11を5パルスの「ストローク小」相当分を下降せしめた後印加電圧を増加しエンピツ芯6に画線のため必要な圧力を加えた状態に保つ。
次に第5図Bの「ストローク大」の動作について説明する。画線中にエンピツ芯6が摩耗限に達しリミツトスイツチ23が動作した場合、または製図信号により芯ホルダ5を交換して他の太さのエンピツ芯6で画線する場合は、先ず加圧棒11を最上限迄急速に上昇せしめると共に、電磁石21を励磁してから電磁石8の励磁を停止する。この場合はアーマチユア9はばね9bにより全ストロークをはね上りその結果芯ホルダ5はばね7の働きにより第5図Bに示す「ストローク大」の距離を上昇してガイド10より完全に離脱し回転ドラム3は回転可能な状態となる。
本発明は以上の如く構成されかつ動作するため種々の効果を提供する。その代表的な効果は、同一芯ホルダ5の面線のためのストロークは芯ホルダ5の交換のためのストロークに比し格段と小さくすることができる。またこのため加圧棒11のストロークも小さくすることができ、同一芯ホルダ5による製図能率を著じるしく向上せしめる点にある。また更に本発明により、加圧棒11を上昇させる場合は必ず一旦「レデイ」状態まで上昇せしめるが、この上昇ストロークをエンコーダ17の出力により必要最小限のストロークに制御することにより、次回の画線の場合の下降ストロークを小とすることができる。このため、製図能率を著じるしく向上させることが可能である。
図面の簡単な説明
第1図は従来の画線ヘツドの一例を示す正面図、第2図は従来の面線ヘツドの加圧棒駆動用モータの入力電圧対時間軸線図、第3図は本発明に好適な画線ヘツドの一例を示す正面図、第4図は本発明による芯ホルダ5の2段ストローク切換え構造を示す斜視図、第5図は第4図に示す芯ホルダ5の2段ストローク時の断面図、第6図は本発明による加圧棒11の動作説明用部分側面図である。
1……画線ヘツド、2……図面用紙、3……回転ドラム、4……モータ、5……芯ホルダ(複数)、6……エンピツ芯(複数)、7……コイルパネ、8……電磁石、9……アーマチユア、9a……切り欠き部、9b……引張りばね、10……ガイド、11……加圧棒、12……ガイドレール、13……ワイヤロープ、14……滑車(2個)、15……モータ、16……光電式エンコーダ用スリツト円板、17……光電式エンコーダ用センサ、18……プーリ、21……電磁石、22……アーマチユア、22a……凸起部、23……リミツトスイツチ(下限)、24……リミツトスイツチ(上限)、25……Oリング。
第1図
<省略>
第2図
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第3図
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第5図A
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第4図
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第5図B
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第6図
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目録
左記構造を有する高性能プロフェショナルプロッタFシリーズ
型番F-六〇〇、同F-六〇〇b、同F-六一〇P、同F-六二〇P、同F-六二〇PR、
ただし、鉛筆芯を用いるペーパームービング方式の、五九四(W)×一二〇〇(L)mm、A一~A四、B二~B四サイズ用紙対応のプロッタ、及び
型番F-九〇〇、同F-九〇〇b、同F-九一〇P、同F-九二〇P、同F-九二〇PR、
ただし、鉛筆芯を用いるペーパームービング方式の、八四一(W)×一三〇〇(L)mm、A〇~A四、B一~B四サイズ用紙対応のプロッタ
記
一 被告装置の全体構造
1.被告装置は、第一図の概観図に示された全体的構成を有する。
2.被告装置は、次の要素を含んでいる(以後、括弧内のローマ字は第一図ないし第七図に示されたローマ字を示す)。
(一) ペンシルストッカ(a)
(二) エンピツ芯用画線ヘッド(b)
(三) 回転ドラム(c)
二 ペンシルストッカ(a)の構造
ペンシルストッカ(a)は、被告装置本体の左端部に位置し、第二図に示されているように、芯ホルダ(d)を保持できるように、ミゾ及び凹部を持つ上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)並びにバネ(g)が、回転軸を中心として配置されている。
ペンシルストッカ(a)は、回転できるようになっており芯ホルダキャッチャ(h)が、作画面である回転ドラム(c)から離れ、ペンシルストッカの位置に移動して昇降することにより所望の芯ホルダ(d)を着脱できるようになっている。
芯ホルダ(d)の中には、エンピツ芯が収納されている。
三 エンピツ芯用画線ヘッド(b)の構造
エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、第三図に示された構造を有しており(カバーを取り外した状態)、次の要素を含んでいる。
(一) 芯ホルダキャッチャ(h)
芯ホルダキャッチャ(h)は、ムービングコイル(j)により上下に駆動され、これによって、芯ホルダ(d)を回転ドラム上の作画面に垂直に上下に移動するとともに、芯ホルダ(d)の着脱動作を行うようになっている。
(二) 芯加圧棒(i)
芯加圧棒(i)は、芯ホルダキャッチャ(h)に保持された芯ホルダ(d)と同一軸線上の上部に位置し、ワイヤ(k)を介してモータ(l)により上下に駆動される。芯加圧棒(i)を下方向に押し下げることにより、芯ホルダ(d)内のエンピツ芯に筆圧を加える。
(三) ガイド(m)
ガイド(m)は、エンピツ芯用画線ヘッド(b)の最下部に位置し、芯加圧棒(i)及び芯ホルダ(d)と同軸線上に、芯ホルダ(d)より径の大きな貫通孔を有しており、画線作業時に芯ホルダ(d)を回転ドラム上の作画面に垂直に上下する時のガイドの機能を果たす。
四 エンピツ芯用画線ヘッド(b)の動作
1.画線動作状態における芯ホルダ(d)の位置
画線動作状態、すなわちエンピツ芯によって画線動作がなされている状態においては、芯ホルダ(d)の最下端は、ガイド(m)を貫通して、回転ドラム(c)上の用紙(作画面)と約〇・五ミリメートルの間隔を保つ位置にある。そして、芯加圧棒(i)が、ワイヤー(k)を介してモータ(l)により芯ホルダ(d)内に収納されたエンピツ芯の上端まで下降し、エンピツ芯を上部から押して用紙に圧接させる(ペンダウン位置)。
第四図は、画線動作状態の芯ホルダ(d)の位置を示す、エンピツ芯用画線ヘッド(b)の側面図である。
この状態で、エンピツ芯用画線ヘッド(b)が左右に移動し、回転ドラム(c)が回転して用紙を前後に移動することにより、所望の画線が行われる。
2.画線動作状態から待機状態への動作
芯加圧棒(i)がワイヤ(k)を介してモータ(l)により上昇し、それに続いて芯ホルダキャッチャ(h)がムービングコイル(j)により芯ホルダ(d)を画線動作状態の位置から約一・五ミリメートル上昇させる。
第五図は、待機状態の芯ホルダ(d)の位置を示す、エンピツ芯用画線ヘッド(b)の側面図である。(芯ホルダの先端は作画面から約二・〇ミリメートルの位置、即ちペンアップ位置にある。)
この状態で、エンピツ芯用画線ヘッド(b)が左右に移動し、また回転ドラム(c)が回転して用紙を前後に移動することにより、エンピツ芯用画線ヘッド(b)は別の画線位置に移動する。
次の画線動作に入るためには、芯ホルダ(d)を画線動作状態の位置まで約一・五ミリメートル下降させ、同様に芯加圧棒(i)をエンピツ芯上端まで下降してエンピツ芯を圧接する。
3.待機状態(ペンアップ状態)から芯交換のために芯ホルダをペンシルストッカに戻す動作
芯ホルダ(d)を交換する時には、まず画線ヘッド(b)の位置を確認するために、画線ヘッド(b)はペンシルストッカ(a)の近傍にある座標原点(n)の位置まで移動する。座標原点(n)の位置は回転ドラム(c)上の作画面と同一の高さに設定されており、画線ヘッド(b)の座標位置を確認するための座標原点となる。
第六図は、ペンアップ状態で画線ヘッド(b)が座標原点(n)上で停止している状態を示している。
ペンアップ状態のまま画線ヘッド(b)をさらにペンシルストッカ(a)に向って移動させエンピツ芯用画線ヘッド(b)のガイド(m)がバネ(g)に突き当たることによってバネ(g)を押し下げ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)のミゾに芯ホルダ(d)をはめ込みながら引き続きムービングコイル(j)を駆動させることによって芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル上昇させ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)の各下面にある凹部(o)に芯ホルダ(d)の上下のツバ(p1、p2)をはめ込む。
第七図は、エンピツ芯用画線ヘッド(b)がペンシルストッカ(a)の所定位置に対向し、芯ホルダ(d)をペンシルストッカ(a)に戻すために作画面のレベルから二・〇ミリメートル上昇したペンアップ状態から、さらに二・八ミリメートル上昇させた時の芯ホルダ(d)の位置を示す図である。
エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、芯ホルダーキャッチャ(h)がその上昇状態を維持したままペンシルストッカ(a)から離れ、それに伴い芯ホルダ(d)が芯ホルダキャッチャ(h)からはずれて、ペンシルストッカ(a)に残る。
ペンシルストッカ(a)に戻された芯ホルダ(d)は、バネ(g)によって、芯ホルダ(d)の上下のツバ(p1、p2)がペンシルストッカ(a)の上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)の各下面にある凹部(o)に押し付けられて、ペンシルストッカ(a)に保持される。
4.ペンシルストッカ(a)から新しい芯ホルダ(d)を受け取る動作
エンピツ芯用画線ヘッド(b)が、別の芯ホルダ(d)を受け取るためにはペンシルストッカ(a)が、所望の芯ホルダ(d)を所定位置に置くために回転した後、エンピツ芯用画線ヘッド(b)がペンシルストッカ(a)の位置まで移動し、ガイド(m)がバネ(g)を押し下げ、芯ホルダキャッチャ(h)が所望の芯ホルダ(d)を芯加圧棒(i)と同軸線上に保持し、さらに、芯ホルダキャッチャ(h)が、ムービングコイル(j)により、芯ホルダ(d)を約二・八ミリメートル下降させ、上部ディスク(e)及び下部ディスク(f)の各下面にある凹部(o)から芯ホルダ(d)の上下のツバ(p1、p2)を解放する。
そして、エンピツ芯用画線ヘッド(b)は、芯ホルダキャッチャ(h)が所望の芯ホルダ(d)を保持した状態で、ペンシルストッカ(a)から離れる。
以上
第一図
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第二図
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第三図
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第四図
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第五図
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第六図
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第七図
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特許公報
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